2012年秋季低温工学・超電導学会 セッション報告

11月7日(水)
A会場 9:30-18:00

産業応用(1) 1A-a01-05 座長 柁川 一弘

1A-a01:三田(足利工大)らは、永久磁石を用いて予備的に着磁した後に、バルク超伝導体をパルス着磁する方法について実験的に検討し、総磁束量と最大磁束密度
に与える永久磁石の有無や配置、冷却温度の影響を評価した。
1A-a02:津久井(足利工大)らは、バルク超伝導体に開けた複数の細孔がパルス着磁に与える影響を実験的に評価し、印加するパルス磁場の大きさや細孔の有無、
冷却温度を変化させた場合の最大捕捉磁場を測定した。
1A-a03:平山(鹿児島大)らは、HTSコイルを用いたリニアスイッチトリラクタンスモータを提案し、有限要素法を用いた二次元非線形磁場解析により、大きな推力/
体積を有することが確認された。
1A-a04:竹田(東工大)らは、宇宙探査推進システム用のHTSマグネットを励磁する熱起電力型電源として、従来のゼーベック効果にネルンスト効果を付与した熱電
素子の適用可能性に関する基礎実験の結果を報告した。
1A-a05:岡田(NIMS)らは、磁気力によるタンパク質溶液の流れを数値シミュレーションし、超電導マグネット内部の軸方向や径方向の磁気力分布が溶液の対流速度
に与える影響を評価した。


Y系線材(1) 1A-a06-10 座長 大松 一也

広長(昭和電線)らは、TFA-MOD法によるY系超電導線材の特性向上について報告した。Dipコーティング法では、線材の両端部に塗布溶液が厚く形成され、結晶化
過程でクラックが生じたり、Jcが低いという問題点があった。この線材横方向の膜厚分布の均一性向上を図るために塗布ダイスを用いた結果、線材幅方向に対して±10%
以下の膜厚分布を持つことが確認され、長尺線材においても400 A/cm級のIc特性を有す線材製造が可能となった。メーカーにおける製造プロセス改善による進展結果の
報告である。
木村(昭和電線)らは、TFA-MOD法REBCO線材の磁場中特性向上について最近の成果を報告した。磁場下の特性向上のために人口ピン止め点としてBZOを微細に
均一分散させた組織を実現させた結果、77 K,3 Tの垂直磁場下での特性は0.07 MA/cm2から0.3 MA/cm2に向上した。BZO粒子の微細分散がJc向上に寄与しているとの
結論であったが、質疑でマトリックスのREBCOの組織そのものにボイドや異相が存在するため、その効果との切り分けやピン止めメカニズムに関する議論がなされた。
宮田(SRL-ISTEC)らは、IRレーザーアシストCVD法を用いたYBCO厚膜試料作製について報告した。本報告は、従来のCVD法で結晶成長させる膜表面にIRレーザの
同時照射を行いながら、高速成膜と高いJcを両立させる全く新しいプロセスの検討結果である。実験結果から、IRレーザ照射をCVD積層回数で変化させない場合には、
a軸粒の著しい増加が認められたが、成長過程で試料からの放射輝度が2層目以降で下がっていることに着目して2層目以降のIRレーザエネルギーを増加させた結果、
a軸粒の抑制とJc向上が確認された。放射輝度は単純に試料温度の低下だけでは無さそうで、今後のさらなる研究進展を期待したい。本プロセスは200 μm/h以上の
高速成膜が可能な手法で、Jc向上の具体的な指針が得られた意義は大きい。
元木(東大)らは、FF(フッ素フリー)-MOD法によるYBCO薄膜の作製に関して、ピンニング力向上のためにCu-richな溶液を用いて積層した膜の磁場中Jc特性の向上結果
を報告した。結論としては、基板直上の組成はYBCO層の上にCu-richYBCO層を積層した構造で、低温低酸素分圧下での焼成により77 K, 2 Tまで105A/cm2以上のJc
維持が観測された。ピンニング力に寄与する組織の可能性としてXRDより未同定層の寄与が示唆された。FF-MOD膜は結晶内の欠陥が少なくピンニング力が弱い課題が
あったが、本研究により磁場中Jc特性向上の指針が得られたことは大きな成果である。
石渡(東大)らは、引き続いてFF-MOD法による(YDy)BCO膜へHf添加を試み、ピンニング力向上を試みた。RE混合膜およびHf添加膜のいずれも、1層目を純粋な
YBCO膜として2層目以降にDy置換やHf添加を行った膜においてc軸配向膜が得られ、77 KにおけるJcの増加と共に、1 Tまでの低磁場中においてJc向上が観測された。
これらの膜においても、FF-MOD法の特徴である短時間焼成のプロセスは適用可能であり、早い結晶成長速度は維持されていることが報告された。
以上を総括すると、本セッションでは従来プロセスの長尺化やピン止め力向上などの開発が着実に継続されていると共に、将来に向けたY系線材の低コスト化を目指した
新しいプロセスの研究が開始されていることが理解され、会場では活発な議論や意見交換が行えた。


送電ケーブル(1) 1A-p01-03 座長 浜辺 誠

1A-p01:大屋(住友電工)らはBi2223線材を用いた容量230 MVA(66 kV, 2 kA)、中間接続部をもつ230 mのケーブルを製作し、性能試験の後、ケーブルを東電旭変電所内
で実系統に接続し、2012年10月29日より実系統運用試験を開始した。その運転状況は住友電工のHPで確認可能である。
1A-p02:中山(古河電工)らはYBCO 線材を用いた275 kV-3 kAの超高圧超伝導ケーブル(30 m)を製作し、製作余長のケーブルを用いたIc測定、310 kVの耐電圧試験、
63 kA-0.63 secの過電流試験がいずれも合格したことが報告された。ケーブルは中国の瀋陽古河に搬送され、1ヶ以上の長期課通電試験を行う予定である。
1A-p03:王(早大)らはYBCO線材における過電流通電時の劣化の原因として、線材の銅層の厚さの薄い部分がホットスポットになり局所劣化につながる、という数値
解析の結果を受けて、実際に銅層の厚さの薄い部分がある線材を作成し、実験的に検証できたことを報告した。


電力機器(2) 1A-p04-07 座長 岩熊 成卓

1A-p04:長村(応用科学研究所)では、超電導電力系統において太陽光、風力等再生可能エネルギー源を最大限に活用するためには、現行の半導体を用いた変換器に
代わり、超伝導体の非線形通電特性を活用した変換器用超伝導素子の開発が有効であるとの報告がなされた。
1A-p05:片山(鹿児島大)では、テープ形状超伝導線材を用いて製作した超伝導パルスコイルにおいて、線材へ印加される垂直磁界成分による交流損失を低減するための
方策として、パルスコイル両端に垂直磁界を打ち消す付加コイルを設置する方法が提唱された。
1A-p06:遠藤(明治大)では、SMES用のヘリカルコイルを製作するための巻線機の試作結果に関する報告がなされた。
1A-p07:山邉(京大)では、3相同軸構造の超電導限流器について、不平衡故障時の動作特性の検証実験結果が報告された。


11月7日(水)
B会場 9:30-18:30

マグネット・周辺技術 1B-a01-05 座長 渡部 智則
1B-a01:木村(高エネ研) 米国Fermi国研試作のILC用超伝導四極プロトタイプ磁石を伝導冷却化し冷却および励磁試験を行った。0.4 A/sの励磁でクエンチは発生せず、
冷却が良好であることを確認した。
1B-a02:本橋(東海大) 24本の5 mm幅YBCO線材を集合した電流リードで、2,000 A級の通電(77 K)を行なった。偏流の原因について測定方法等へアドバイスや意見が
出された。
1B-a03:菅根(昭和電線) ペルチェ電流リードの大容量化(1 kA級)について検討し、最適構造には調整が必要であるが、1 kA通電にもペルチェ電流リードは効果を発揮して
いることを確認したと報告した。熱収支など、設計について明確化するようにとの指摘があった。
核融合研はシート状自励振動式ヒートパイプの動作実験に関して2件報告した。
1B-a04:三戸 ヒートパイプの動作を、作動流体にエタノールを用いて可視化し動画を用いて紹介した。
1B-a05:夏目 水素、ネオン、窒素をそれぞれ作動流体として動作試験を行ない、高い熱輸送特性を有することを確認した。伝導冷却に有効な技術となることが期待される。


Y系パンケーキコイル 1B-a06-10 座長 吉田 清
本セッションは、Y系線材を用いたパンケーキコイルの熱、応力の検討の発表があった。
1B-a06:高橋(東北大学)は、内径40 mmのGFRPボビンに巻きつけたパンケーキコイルの過渡熱解析を行い、昇温時に半径方向の応力が引張状態になるので、昇温時
の温度上昇を抑制すべき提案があった。
1B-a07から1B-a10:中部電力、東北大学、早稲田大学の共同研究のY系線材のパンケーキ巻線をGFRP製の容器で補強するコイル構造について、構造の提案および
実証実験、応力解析、3次元数値解析の5件の発表があった。
1B-a07:渡部(中部電力)からは、新コイル構造の提案について説明があった。
1B-a08:渡部が新コイル構造を8 Tの外部機械の中での励磁試験の測定結果を示した。
1B-a09:淡路(東北大学)が応力ひずみの解析をしめして、導体に発生する応力は、単純計算(BJR)では1.7 GPaに対して、測定値は500-800 MPa、解析では700 MPa
と約40%まで低減した結果が示された。
1B-a10:王(早稲田大学)が同様に3次元の構造解析の結果を示した。コメントとして、電磁力をBJRで比較する意味が不明である点が指摘された。また、ITERのTF
コイルのように巨大な電磁力を容器で支持方式は一般的な設計方法なので、金属系超伝導コイルの研究を参考にしたほうがよいとのコメントがあった。


HTSコイル 1B-p01-03 座長 東川 甲平

1B-p01:川嶋(神戸製鋼)らは、Bi-2223線材を用いた3 T MRIマグネットの開発について報告した。高温超伝導マグネットにおいて特に問題となる磁界の均一性の確保について
良好な成果が得られているとともに、実際に1.5 TにおいてMacacaの脳の撮像にも成功しており、大変インパクトのある講演であった。一方、3 Tへの励磁の際には、3回目の励磁で
トラブルに見舞われたようで、全コイルがダメージを受けたということではあったが、このような失敗例の報告は、高温超伝導マグネットの応用技術確立には非常に貴重な情報であり、
質疑応答も活発となっていた。
1B-p02:水野(鉄道総研)らは、磁気浮上鉄道への適用を目的としたイットリウム系マグネット開発について報告した。単段式冷凍機を用いた輻射シールドのないマグネットを開発
できれば、車上マグネットと地上コイルの距離を近くできるという大きなメリットがあり、40-50 Kで5 Tの励磁が可能な試作マグネットについて報告があった。元の線材の不均一性に
起因すると思われるダブルパンケーキコイルごとの特性のばらつきも見られたようであるが、含浸法やコイル構成の様々な工夫により、想定通りの励磁に成功するすばらしい成果
であった。
1B-p03:中村(京大)らは、50 K以上の高温運転を目指した高温超伝導マグネットの概念設計について報告した。冷却システムの簡略化や効率の観点からこのような運転温度で
動作可能なマグネットの優位性について言及があり、様々な高温超伝導線材とコイル構成の採用を想定したコイルの設計結果について報告があった。特に、イットリウム系線材では
問題となる可能性のある局所不均一性についてもコイル設計に反映されており、その考え方への会場の反応が大きかった。一方、現在は作製の可能性のある0.5 T程度のコイル設計
から始めているとのことであったが、さらに市場性が認められる高磁界のコイルでは、もう少しイットリウム系線材の優位性が顕著となるのではないかとのコメントもあった。


HTS測定 1B-p04-09 座長 植田 浩史

1B-p04 米田(京大):Roebelケーブルの交流損失を、薄膜線材、Roebelケーブルの素線、薄膜線材を3枚スタックした導体(3×1線材スタック)、薄膜線材3枚スタックを2つ
並べた導体(3×2線材スタック)の交流損失と比較した。Roebelケーブルと3×2線材スタックの外部磁界なしの通電損失はよく一致したが、通電電流なしの磁化損失はRoebel
ケーブルが3×2線材スタックに比べて低磁界領域で大きくなった。両者の全損失はほぼ一致した。磁化損失が薄膜線材よりもRoebelケーブルの素線の方が大きくなっている
ことについて質問が出たが、線材内のIc分布(加工した際のエッジ部のIc劣化)が影響しているとのことであった。
1B-p05 古川(鹿児島大):ポインチングベクトル法によるHTS線材の交流損失測定を斜め磁界が印加された状態でも可能になるように測定装置を拡張した。斜め磁界を発生
させるために、軸方向に一様な磁界を発生させる銅マグネットの内部に2つの銅マグネットを内挿した。内挿した銅マグネットにはそれぞれ逆向きの電流を流し、径方向磁界を発生
させる。軸方向磁界と径方向磁界を重ね合わせて、斜め磁界を作り出す。この測定装置を用いて、斜め磁界中のポインチングベクトル法によるHTS線材の交流損失の測定が
可能であることを示した。
1B-p06 平山(鹿児島大):ピックアップコイル群によって、マルチフィラメントHTS線材の電流分布を測定した。ピックアップコイルに使用するCu線材の線径をこれまでのφ40 μmから
φ30 μmに細線化した。その結果、線材をコイル間の距離を近づけ、測定間隔を細かくし、磁場測定の空間分解能を向上させた。ピックアップコイル群の1個のコイルは3層17ターン、
コイル数は40個である。磁場測定から数値計算した電流値は最大誤差20%程度となった。この誤差は、数値計算を行う電流算出プログラムのアルゴリズムを改善することで低減
可能とのことである。
1B-p07 雁木(九大):Jc測定で一般に用いられる四端子法では、高Jc領域や低電界領域での電圧ノイズの影響が問題となる。そこで、磁気モーメントベクトルを測定することで、
非破壊・非接触なJcの磁界角度依存性評価法を提案した。磁気モーメントは、外部磁界に平行な成分だけでなく、横方向成分も測定した。本手法を使えば、四端子法では
測定が難しい高Jc領域の角度依存性を非破壊・非接触で測定可能となる。
1B-p08 廣松(九大):四端子法によって得られた磁界下のE-J特性と磁化の緩和特性で得られたE-J特性を実験的に比較し、両者の関係について考察した。四端子法では
10-4~10-2 V/mの電界領域に亘るE-J特性が得られるが、磁化緩和測定では10-11~10-9 V/mの非常に低い電界領域のE-J特性が得られる。磁束クリープを考慮したパーコ
レーションモデルの解析式を用いると、四端子法と磁化法のそれぞれの実験結果に定量的に一致し、パーコレーションモデルが広い電界領域に亘り有効であることが示された。
1B-p09 東川(九大):長尺RE123線材の臨界電流の幅方向分布をリール式磁気顕微鏡により連続的に非接触で測定した。本手法は、線材長手方向に800 μmごと、線材幅
方向に25 μmごとの残留磁界分布が測定でき、Biot-Savart則の逆問題を解くことで電流分布を得ることができる。本手法を使えば、14 m長5 mm幅の線材を10分割したマルチ
フィラメント線材(フィラメント幅500 μm未満)について、10本のフィラメントとその長手方向の揺らぎが可視化でき、フィラメントごとの局所Icの長手方向分布まで評価可能である。
このような試料の評価は現在、本手法によってのみ可能とのことである。


11月7日(水)
C会場 9:45-18:15

MgB2(1) 1C-a01-04 座長 木内 勝

1C-a01:伊藤(東大院工)らは、自作のMgB4を前駆体としてMgB2を作製し、1 hの熱処理では熱処理温度に依存せず、一定の充填率とコネクティビティが得られることを示した。
しかし、未反応MgB4やMgO粒子が、充填率とコネクティビティに悪影響を与えることから、さらに900℃の長時間熱処理により、充填率61%、コネクティビティ17%、Jc(20 K)=
2.7×105 A/cm2を示し、さらなる最適化により高Jcが期待できると指摘した。
1C-a02:前田(日大)らは、MgB2の電流輸送の妨げとなるMgOを制御するために、水素ガスの濃度を調整して、リンゴ酸添加及び無添加MgB2線材を作製した。混合ガス中の
水素濃度は10 vol%まではTcへの影響はないが、Jcは濃度の増加と共に劣化することを示した。これはMgO粒径の増加による電流パスの制限が原因であることを報告した。
1C-a03:恒松(京大)らは、Al及びジュラルミンテープ上に電子ビーム蒸着法でMgB2テープを作製し、遷移特性とJc特性について報告した。特にテープ温度300°Cで高いJcが得られ、
更なる高温度での熱処理は、基板との反応の原因となり特性が劣化することを示した。
1C-a04:東川(九大)らは、MgB2多芯線材のフィラメント内の局所電流分布を、磁気顕微鏡を用いて評価した。さらに、この評価から得られた局所Icの最小値が、通電法で得られた
Ic値と定量的に一致することを示し、この評価法の有用性を示した。


鉄系超伝導 1C-a05-09 座長 松本 要

1c-a05 一瀬(電中研) CaF2基板上にPLD法を用いて作製したFe(Te,Se), FeTe, FeSe薄膜に関して透過型電子顕微鏡による基板界面近傍の微細構造観察,元素分析等の
結果が報告された。
1c-a06 藤岡(NIMS) 粒界弱結合の緩和を狙ってSm-1111鉄系超伝体にIn, Ag, Pb, Snなどの金属を添加を行い,In等で良好な結果が得られた。
1c-a07 東川(九大) 低温磁場中走査型ホール素子顕微鏡を用いて、FeSe0.5Te0.5バルク超伝導体の表面磁界を測定し電流パスについて議論した。
1c-a08 筑本(SRL) 高いTcと比較的低い異方性をもつBaFe2As2 (Ba122)系薄膜をPLD法でAsをPで置換した薄膜を形成し,Jcに与える影響が報告された。
1c-a09 戸叶(NIMS) PIT法による(Ba,K)Fe2As2超電導体線材の作製結果が報告された。被覆に銀を用いることで線材化において良好な結果が得られており,銀の有効性が
示された。


HTS機械特性 1C-p01-05 座長 土井 俊哉

1C-p01:坂井(超電導工研)らは、PLD-GdBCO線材の垂直引張剥離強度測定およびSEMによる組織観察結果について報告した。未対策30試料の剥離試験結果から、コイル
作製時には11毎に1か所の確率で剥離が生じると推定した。剥離部分の組織観察結果より、剥離の起点が基板表面の汚れや不良に起因することを突き止め、成膜前にハステロイ
基板を洗浄することによって剥離発生頻度を大幅に低下させることに成功した。
1C-p02:笠場(富山大)らは、DI-BSCCO線材の剥離強度とその試験方法について報告した。試験片を試験用治具に固定するための用いる接着剤の種類によって剥離強度
試験結果の数値が異なるため、適切な接着剤の選定が有用であるとした。また、最終破断前に、内部破断が発生する可能性もあり、その点を考慮に入れた試験方法を確立
する必要があるとした。
1C-p03:長村(応科研)らは、ステンレス箔をラミネートしたDI-BSCCO線材の引張試験結果とJcの引張歪依存性を測定し、予荷重を印加したステンレスラミネートDI-BSCCO
の特性改善は、熱歪と予歪の和で表されるforce free stressおよびBSCCOフィラメント自身の引張強さの増加によることを明らかにした。
1C-p04:鈴木(東北大金研)らは、REBCOコート線材に引張、或いは圧縮応力を印加しながら酸素アニールを施すことで、線材長手方向にa軸が平行になる結晶粒とb軸が
平行になる結晶粒の体積分率が異なる試料を作製し、REBCO中の双晶量と残留歪を制御した試料を用いてJcB特性の歪依存性について議論した。
1C-p05:狩野(早大)らは、線材がエポキシ樹脂含浸時に受ける熱履歴を想定して、195℃での保持時間がY系線材のJcに与える影響を調べ、AMSC社製線材では10分で9%の
Ic低下、SuperPower社製では60分で5%のIc低下が生じることを報告した。


加速器(1) 1C-p06-08 座長 戸坂 泰造

1C-p06:李(京大) コーティッドコンダクターを用いた二極と四極のコンバインド型磁石の設計について報告された。巻線の3次元形状をFrenet-Serretの式で表現することで、
要求事項を満たす設計が可能であることを示した。
1C-p07:合田(京大) スパイラルセクタ型FFAG加速器用コイル支配型マグネットの積分磁場設計について、報告された。今回は、リターンヨークやフィールドクランプの磁気
飽和特性を考慮しなかったが、今後考慮していく予定とのことである。
1C-p08:大竹(京大)  RE系線材の遮蔽電流について、レーストラックコイルの多極磁場成分の測定結果と二次元断面モデルによる数値解析結果について報告があった。
allowed成分以外の磁場が計測されているが、その評価は可能かとの質問に対しては、巻線寸法誤差や線材特性のばらつきなど様々な原因があり、難しいとの答えであった。


11月7日(水)
D会場 9:30-18:15

冷却システム(1) 1D-a01-05 座長 槙田 康博

1D-a01 KEK-STFにおける両氏ビームクライオモジュール用2Kヘリウム冷却システム 小島裕二 (KEK)
KEKで運転中のSTF超伝導加速器空洞用2 K冷却システムの紹介と、試験体(キャビティ)を収納するクライオモジュールの侵入熱に関して測定結果を報告した。
測定結果のトレンドグラフからこのシステムは4 Kヘリウム液化器によって蓄えられた液体ヘリウムを2 Kシステム側にバッチ的に送っているようだが、そのような
運転方法なのか?という質問に対して、これは侵入熱測定のために、4 K液化器からの液送りを間欠的に行っているだけで、普段は連続フローであると説明がされた。
1D-a02 液体水素冷却高温超伝導線材の磁場下特性実験の概要 白井康之 (京大)
液体水素冷却下での超伝導線材の特性を測定する試験装置が完成したので、その設計と最初の冷却試運転報告がされた。液体水素中に直接被冷却体(超伝導材)を
浸して試験できる装置で、液体ヘリウムで冷却される超伝導磁石の内部ボアに挿入され、最大7Tの磁場を印可される。水素安全および法対応をクリアした意義の
ある装置として評価される。液体水素と液体ヘリウムの物性の違いが予冷時間や定常蒸発量から示されていた。
1D-a03 液体水素冷却超伝導線材特性試験装置の開発 達本 衡輝 (JAEA)
前講演と連続した発表で、より詳しい設計時の検討内容と、初期試運転時の確認内容について報告された。液体水素槽は温度を多少変動できるようヒーターや低温
ヘリウムガスラインが挿入されていることなどが紹介された。7Tの超伝導磁石は工場で1回トレーニングののち7Tが達成され、現地での冷却試験ではノートレイニングで
6.4 Tまで達した。質疑応答の中で、水素側の電流リードは侵入熱最小化の最適化は行わず、常温部分が決して冷えないことを念頭に設計したと報告された。
1D-a05 高温超電導ケーブル用冷却システム試験 大野 隆介 (前川製作所)
液体窒素をスターリング冷凍機群でサブクール状態にして高温超電導ケーブルを冷却するシステムの試運転結果が報告された。2直3並列で合計6台の冷凍機の運転
台数コントロールで模擬ヒーターの熱負荷を変動しても、2Kの範囲で温度制御できる結果を得たことが報告された。質問では台数制御や冷凍機の詳細について
質問が多数あり、冷凍機部分で窒素が凍らないためのヒーターがついていること、メンテナンス性を考えて2直にした旨の説明があった。


熱伝達/水素利用(1) 1D-a06-10 座長 高田 卓

セッション「熱伝達 / 水素利用(1)」は、1D-a06藤坂(京大)液体窒素熱伝達の研究に加え、1D-a07~a10は、液体水素利用を目指す東北大流体研の大平グループに
よる液体水素を模した液体窒素、スラッシュ窒素熱伝達の研究発表であった。
1D-a06藤坂(京大)らは、液体窒素中における冷却フィン熱伝達の性能報告を行った。定性的な報告にとどまらずフィン効率の定量的な評価を望む声が上がった。
1D-a07,a08大平(東北大)は、液体水素ターボエンジンの開発を目指した矩形管における沸騰流のボイド率、圧力損失、熱伝達特性について報告を行った。
Dittus-Boelter式等の相関式と測定値の比較が行われ、それぞれの妥当性について解説され、正しく条件を選ぶ事で、±30%程度の範囲で予測可能である事が報告された。
1D-a09奥山(東北大)は、矩形管においてもスラッシュ窒素が流束3 m/s程度の早い流れにおいて圧力損失低減効果を示す事を報告した。一方で、熱伝達の悪化も伴う為、
液送を鑑みた上での工学的な価値について示される事が期待された。
1D-a10細野(東北大)では、スラッシュ流体の数値計算結果が報告された。三角形管内に出来る2次流れの再現に成功したものの、圧力損失低減効果の再現には
至っておらず、固体窒素粒子の干渉について更なる進展が望まれた。


Nb3Al 1D-p01-04 座長 西島 元

Nb3Alセッションには4件の発表があった。飯島(NIMS)はRHQT法Nb3Al線材の製造プロセスにおける通電加熱電極間距離が超伝導特性に及ぼす影響について報告した。
通電加熱電極間距離を長く、RHQ処理時間を短くするとJcが向上する。さらにAlの厚さは薄いほうが良いとも述べたが、電極間距離を長くすると装置が大型になるため、
最適化のためにはトレードオフを考える必要がある。
金(KEK)はRHQT法Nb3Al線材のA15生成熱処理中のin-situ中性子回折結果について報告した。線材の残留歪については冷却過程において200℃で明確な残留歪が
観察され、最終的には引張り側に0.05%程度であると述べた。
RHQT-Nb3Al線材においてNbマトリクスの場合にはフラックスジャンプ、Taマトリクスの場合には加工性の悪さが指摘されているが、竹内(NIMS)は、改善策としてAg層を
挟んだNbバリア構造を提案した。試作線材の伸線加工性は良好であり、Ag液の熱膨張による外皮破裂等も無かったと述べた。また、伴野(NIMS)はNbバリア、Taバリア
フィラメントそれぞれの場合について断線リスクを評価し、Taバリアフィラメントの本数を可能な限り減らし、バリア厚さを1.5倍にすることで加工性が改善し、300 m
試作線材では無断線であったことを示した。ただ、中心部に集合しているNbバリアフィラメントの部分的な結合によるフラックスジャンプの抑制という課題も残されている。


Nb3Sn 1D-p05-08 座長 村上 幸伸

1D-p05:谷口(大阪合金) ブロンズ中Sn濃度が16%以上のものは、α相の固溶限を超えるために伸線加工が困難となり実用化に至っていない。谷口らは、20%Sn-0.3%Tiや
18.5%Sn-3%Tiといった高Sn濃度ブロンズの機械的特性を700℃以下の広範囲にわたって調査し、18.5%Sn-3%Tiの組成では、600℃~700℃の領域において200%もの伸び
を示すことを明らかにした。
1D-p06:太刀川(東海大) 太刀川らは、Cu-SnにZnを加えた3元ブロンズの加工性について報告。ZnのSn当量を0.5とすると、13Sn-7Zn-0Tiは16.5Sn相当となるが
14Sn-0Zn-0.3Tiよりも加工硬化が小さいことを示し、従来の2元ブロンズ線材より加工が容易になることを示唆した。
1D-p07:小黒(東北大) 小黒らは強磁場マグネットに用いるCuNb補強Nb3Sn線材について報告。従来のin-situ法に比べ、Nb-rod法ではひずみ依存性が大きくなるが、
0.2%耐力が高くなったことでより大きな電磁力に耐えられることを示した。
1D-p08:濱野(上智大) SULTAN試験後のITER-CIC導体において、電磁力と垂直方向に素線が大きく曲がっている現象が観察されている。濱野らは、軸方向圧縮力の開放
によって素線が座屈することで曲げが生じるとして理論解析モデルを構築し、現象解明の試みを報告した。


11月7日(水)
P会場 ポスターセッションI 14:30-15:45

計測・基礎 1P-p01-04 座長 廿日出 好

1P-p01 住友化学の恵らは、これまで詳細な報告のなかった高純度アルミニウムの電気伝導度の温度依存性について実験により調べた。純度2N7から6N7のアルミニウムを
圧延して、厚さ0.1~2 mmの板材を作製、4.2~296 Kまでの電気抵抗を四端子法で計測した。その結果、抵抗はアルミの純度に依存し、高い純度のものほど低抵抗となった。
また、抵抗は厚い板材ほど高かったが、30 K以上の温度ではその違いは小さくなることを示した。
1P-p02 鉄道総研の山田らは、FBG(Fiber Bragg Grating)方式の光ファイバ温度センサを作製し、その極低温特性を調べた。FBGの感度はコーティングにより向上する可能性
があり、銅や亜鉛、アクリル等でコーティングを行い、FBGの波長シフト変化量を調べたところ、コーティングなしと比較して、銅、亜鉛のコーティングによりそれぞれ約1.9倍、
6.4倍の変化量となった。現在20 Kまで調査しており、今後さらに低温での調査を行う予定とのことである。
1P-p03 NIMSの野口らは、東日本大震災で被災した930 MHzNMR用超電導マグネットの状況を視認するため、極低温で使用できるCCDスコープを作製、このスコープを用いて
マグネットの視認調査を行い、視認しながらの掘り起こし作業、ドリル作業などを実施することが可能となった。現在超電導マグネットは順調に修復中とのことで、早い復旧が
期待される。
1P-p04 早大の相原らは、小型LTS-SQUIDを用いた小動物生体磁気計測装置を用いて心筋梗塞モデルマウスのMCG(心磁図)を計測しており、モデルマウスの異常なMCG
を健常マウスと比較・判別するため、シングルダイポールを仮定した逆問題解析により心臓から発生する磁場のソースを経時的に同定し、そのダイポールモーメントの向き
(角度)を特徴量として抽出することで、健常とモデルマウスの判別に有意と思われるデータを示した。今後はデータ数の増加による異常判別基準の定量化が求められる。


HTS電磁特性 1P-p05-08 座長 井上 昌睦

1P-p05:土屋(熊本大)は、スパッタリング法により作製したBi,Pb-2223薄膜の臨界電流特性について報告した。スパッタによる薄膜形成後に、Bi,Pb2223ペレットで囲んだ状態での
アニール処理を施すことにより結晶性の向上とPbの導入を実現している。
1P-p06:和田(九工大)は,配向クラッド基板上にPLD法で作製されたGdBCO線材の臨界電流特性の成膜速度及び超電導層膜厚に対する依存性について報告した。成膜速度
の差が2割程度(20 m/h及び25 m/h)であるのに対して、膜厚は1.04 μmから3.25 μmまでの幅があったこともあり、臨界電流特性は全体として膜厚に起因すると思われる依存性を
示していた。
1P-p07:前川(新潟大)は、高温超電導線材を用いた回転機に鉄芯を用いた際の交流損失特性ついて研究を行っている。今回、鉄芯からの漏れ磁場を模擬した試験装置を作製し、
各種条件下における交流損失特性を評価した。今後、鉄芯にコイルを巻いての試験を計画しているとのことで本研究の成果に基づく解析が進められるものと期待される。
1P-p08:木内(九工大)は、希土類系高温超電導線材の縦磁界下での臨界電流特性について報告を行った。電流の印加方向と平行に磁場を印加する縦磁界下(B//I かつ
B//ab面)において、一般的な平行磁場(BI かつB//ab面)よりも高い磁場中臨界電流特性が得られることを確認しているものの、金属系超電導体や酸化物超電導体の単結晶
基板薄膜で観測されている低磁界でのJcの増加現象は今のところ得られていないとのことである。


Y系物性 1P-p09-11 座長 前田 敏彦

1P-p09:小川(大同大)は,双晶の存在により粒界部が軟化しているという仮定の下で有限要素法による YBCO 薄膜の弾性変形解析を行い,粒界部の弾性定数を変化させて
ヤング率とポアソン比を算出した結果を報告した.
1P-p10:山田(名大):コンビナトリアル PLD 法により Y/Ba 組成を連続的に変化させた YBCO 薄膜を作製し,Ba/Y 比が超伝導特性に及ぼす影響を調べた結果について報告した.
1P-p11:水谷(名大)は,人工ピンとして BaHfO3(BHO)と BaSnO3(BSO)を同時にドープした PLD-YBCO 薄膜を作製し,BHO と BSO の比率が磁場中超伝導特性に及ぼす
影響を調べた結果について報告した.


冷却・冷凍 1P-p12-19 座長 古瀬 充穂

1P-p12:中野(住重) 住友重機械工業よりスターリングパルスチューブ冷凍機の開発報告。200 W@77 K級の冷凍能力で、高温超電導機器応用向けの新ラインアップ。今後
市場の広がりと競争の激化が予想される冷凍機で、ユーザーとしても期待が大きい。
1P-p13:増山(大島商船高専) GM冷凍機の蓄冷剤に種々の寸法のベークライト棒を挿入したときの冷凍能力の比較。蓄冷効果がないはずのベーク棒を入れると冷凍能力が
向上する効果が確認された。もともと充填されている蓄冷剤のうち蓄冷効果に寄与している体積はそれほど大きくなく、むしろ冷媒流速が速くなって冷凍能力が向上したのでは
ないかと考察されていた。
1P-p14:宮崎(鉄道総研) 鉄道車両用の空調機としての磁気冷凍システムの検討の中で、磁気作業物質としてLaFe系材料を使用したときの冷凍能力を、従来のGdと比較して報告。
1P-p15:大森(帝京大) 真空多層断熱材(MLI)に隙間が生じた場合、その間隙からの侵入熱を数値解析および実験的に検討。隙間が生じる可能性のある箇所にパッチ当てする
ようにMLIを重ね、侵入熱が低減できることを示した。
1P-p16:土岐(中部大) 長尺送電ケーブルの真空断熱管の真空度向上と熱侵入低減を目的とし、SUS内管(直管)に巻くMLIの量と真空度をパラメータに熱侵入量を定量的に評価。
1P-p17:園田(NIMS,千葉大) 宇宙用の断熱消磁冷凍機として、磁性体と超電導マグネットからなる断熱消磁冷凍ユニットを4段、間に熱スイッチを介して直列接続し、位相を
ずらして駆動させることにより連続的に熱を汲み上げるシステムを提案。システムにおける各種の侵入熱を定量的に評価し、性能向上の指針について検討されていた。
1P-p18:宗(KEK) SuperKEKB IR 超電導マグネットの巻枠と室温のビームパイプとの間は3.5 mmほどしかなく、その隙間に入れるMLIの層数と熱侵入量の関係を定量的に評価。
層数が増えれば低減できるが、たくさん押しこんでしまうと熱伝導が効くのか逆に熱侵入量が増える結果も示されていた。
1P-p19:横山(足利工大) 超電導バルク体と冷凍機を一体としたバルク磁石装置を、様々な用途で利用できるよう複数の構成を提案し、試験の様子も紹介されていた。卓上型など、
より手軽に超電導の強磁界を利用できる工夫があり、理科学・産業応用等への展開が期待される。


電気機器 1P-p20-25 座長 中村 武恒

1P-p20:九州大学の大嶽らは、5 MW級のY系超電導風力発電機の設計検討結果を報告した。界磁コイルを超電導化した超低速同期発電機を志向しており、ギャップ磁界と
超電導界磁コイル形状との関係を議論した。
1P-p21:東京大学の寺尾らは、10 MW級超電導風力発電機について、永久磁石発電機他と比較した際の特質を解析結果に基づいて報告した。その結果、超電導発電機が
既存の永久磁石発電機に対して、コストやコンパクト化の観点から有利であることが説明された。
1P-p22:芝浦工業大学の近藤らは、医療や半導体分野の応用を指向した非接触超電導ポンプの設計・試作・試験結果について報告した。単極ならびに2極磁石回路について
試作を行い、3000 rpmの回転試験に成功した。
1P-p23:岡山理科大学の水川らは、小型クライオクーラーを用いた超電導モータの試験結果を報告した。
1P-p24:秋田県立大学の二村らは、磁性流体を吸着した超電導浮上磁石の振動特性について、解析的検討結果を報告した。
1P-p25:岡山大学の川本らは、三次元超電導アクチュエータの動特性について、解析的検討結果を報告した。


電力機器(1) 1P-p26-28 座長 白井 康之

1P-P06:蔀(堀田電機製作所)から、KEKとの共同研究による超電導球形ソレノイドマグネットの製作について報告があった。一般のソレノイドマグネットを7分割し、球の赤道から
両極に向かって径を小さくして、それぞれの巻線導体の中心を円周上に配置し、通電電流が極に向かって余弦関数で小さくなるよう巻き線数も減らす。ソレノイドでは、磁場分布が
空間において均一とならないので、この空間利用率を改善してエネルギー貯蔵のコンパクト化を目的としている。
1P-P07:荒井(鉄道総研)からHTS磁気軸受(SMB)を用いたフライホイールの模擬試験装置の開発に関する報告があった。超伝導コイル(BSCCO)とバルク体(GaBCO)を組み
合わせ、スラスト・ラジアル加重の非接触浮上支持をしている。今回、ロータダイナミクス解析をもとにして、実験により低次共振点を超えた2000 rpmの回転を確認した。
1P-P08:片野坂(九大)からNEDOプロジェクトのREBCO超電導変圧器の限流特性に関する実験報告があった。20 MVA級の開発に先駆けて突発短絡試験での短絡電流が
それと同等になるようにした6.9 kV-400 kVAを、限流器能なし(銀層:銅層16 μm:300 μm)と限流機能有り(銀層:銅層18 μm:50 μm)の2タイプ製作し、突発短絡試験結果を
比較検討している。ともに短絡電流に耐えることが確認され、限流機能については、劣化無く定格電流の3倍に抑制できた。抵抗発生は磁場分布の影響を受けず巻線全体が
常電導状態になったと考えている。


送電材料 1P-p29-31 座長 岡村 哲至

1P-p29:小原(中部大) 超電導直流送電用ケーブルの導体構造に関する研究である。1本のビスマス系線材を囲むように電磁鋼板を配置すると、囲む位置によって線材の臨界
電流値およびn値は、何もしない場合に比べて減少もするし大きくもなることを実験により示している。今後、解析により線材内の磁場分布を明らかにするということである。
1P-p30:孫(中部大) 前の発表と同じく、直流超電導ケーブルの導体構造に関する研究である。5本のビスマス系線材をそれぞれ間隔をもたせて配置したときに、その隙間間隔の
大きさに線材の臨界電流値が影響されることを明らかにしている。5本ではなく実際にケーブルに近い構造で線材を配置した場合についてはどうなるのか、という議論があった。
1P-p31:福本(鉄道総研) 鉄道用超電導ケーブルの開発に関わる研究である。ビスマス系およびRE系線材について、0.01~1 T程度の低磁場領域でのIc-B-T特性を計測している。
かなり精緻な計測結果であり、低磁場領域での線材のIc-B-T特性が把握できたと考えられる。この結果を基に、超電導ケーブルの詳細設計を行うことができるとしている。


核融合/NMR(1) 1P-p32-36 座長 松下 照男

1P-p32: 濱口(NIFS)はLDHヘリカルコイルに導入されたサブクールシステムによって、定常運転時における安定性の向上ならびに安定化のためのヒーターの熱負荷
軽減効果や待機モードへの移行の際の省力化が可能になったことを示し、このシステムが有効であったことを明らかにした。
1P-p33: 田村(NIFS)は概念設計が行われているヘリカル炉FFHR-d1の超電導マグネットの電磁力解析とマグネットを支持する構造物の設計を通して、マグネットの
形状の最適化を行った。
1P-p34: 淺川(JAEA)はJT-60SAの各マグネットに電流を供給する超電導フィーダーの設計を行い、冷却による熱収縮や電磁力による変形を許容できるような構造とした。
1P-p35: 夏目(NIFS)はJT60-SAのFFコイル用Nb-TiCC導体における一次撚り線内、各次の撚りサブケーブルを跨いだ素線間の接触コンダクタンスを丹念に測定し、
とくに四次撚りサブケーブルを跨いだ素線間の接触コンダクタンスがその周囲のステンレスのラップのために低くなることを明らかにした。
1P-p36: 大浦(東大)は小型NMR用超電導マグネットを目的としてリング状バルク超電導体を重ねたマグネットを作製し、最適なバルク間のギャップを解析するとともに、
実際の空間のトラップ磁界の均一性を測定し、比較した。



11月8日(木)
A会場 9:30-18:00

HTS電流特性 2A-a01-06 座長 山崎 裕文

2A-a01 松本(物材機構): Bi(Pb)2223 相の生成機構や電流経路等についての知見を得るため、薄膜作製の研究を行っている。RFスパッタ法でBi(Pb)2212層と
CaCuOアモルファス層の積層膜を作製し、成膜後の熱処理によって Tc(R=0) > 100 K のBi(Pb)2223薄膜を得た。
2A-a02 梶原(九大): 関連して、スパッタ法で作製した Bi(Pb)2223 前駆体薄膜に種々の熱処理を施して Bi(Pb)2223 薄膜を作製し、熱処理条件と Jc, 微細組織の
関連について調べている。東大から Bi2223 および Y123 の低酸素分圧下アニールによる超電導特性改善効果に関して2件の発表があった。
2A-a03 田島(東大): 銀シース Bi2223 多芯線材の1次焼成を酸素分圧 0.02 atm で行うことによってIc が向上することを示した。
2A-a04 下山(東大): 800℃、1 %O2/Ar 気流中の焼成で Y123 焼結試料の粒間 Jc が向上することを報告した。
2A-a05 永水(九工大): BHO ピンの導入による GdBCO 線材の Jc 向上に Bc2向上の寄与が大きいことを報告したが、磁化法で得られた Bc2 の値がかなり
低いことから、通電法でも同様の値が得られるかと言う質問があり、未測定との回答であった。
2A-a06 榊原(九大): Zr ピンを導入した MOD 法 YGdBCO 線材の磁界角度依存性を測定し、異方性の低減から、ランダムポイントピンの導入を示唆した。


Y系線材(2) 2A-a07-11 座長 飯島 康裕

「Y系線材(2)」のセッションでは、RE系線材特有の金属複合構造の機械的性質、及び低コスト化に繋がる配向金属基板を用いた線材開発、 次いで低交流損
を目指した細幅化加工技術の進展等が報告された。
先ず岩手大の内藤らから、ヒートサイクルに伴う熱収縮時の機械的ふるまいにおいて、表層の安定化金属膜の膜厚に依存した独特の応答があるこ とが見いだされ、
これが線材の湾曲によって合理的に説明できることがシミュレーション結果と併せて示された。異種金属に挟まれた酸化物膜で構 成されたRE系線材特有の構造に
ついて力学的理解が進んだものと思われる。
次に兵庫県立大の岡井ら及び京都大の成田らより、材料コスト低減の観点から鉄を用いた圧延配向金属基板と中間層積層の試みについて報告が あった。強く
{110}<001>方位の集合組織を有した鉄基板を使って、Y2O3及びYSZの中間層膜において基板に垂直 に<111>軸が配向した6回対称膜が再現よく得られ、
さらにYSZを厚く積層することにより4回対称膜に変化することが確認され た。このように膜厚に伴って配向方位が変化する現象はイオン衝撃下の蛍石系中間層
材料の成長においても見られたもので興味深いが、プ ロセススループットの観点からは薄膜であることが望ましく、立方体配向の鉄基板形成の成功も期待される。
一方、住友電工の新海らからは、配向金属とSUSをクラッドした構成の30 mm幅の基板を用いて、PLD法を用いてGd123膜を形成し、これ を2 ~4 mm幅に裁断、
4 mm幅換算で6 km長の線材を製造し、5 kA級モデルケーブル用線材に供したことが報告された。単長は20 mとのことで あるが、こうした細幅の線材がまとまって
製造され健全なケーブルを構成出来たことから、同社のクラッド方式基板が充分な機械特性を有している ことが伺える。
最後に、超電導工学研究所の町らより、レーザースクライビングと化学エッチングを用いたRE系線材のマルチフィラメント加工に関して報告が あった。従来5 mm幅を
3-5分割する加工技術は確立されていたが、今回さらに10分割した構造で、100 mにわたって均一な特性が得られ、磁 気ヒステリシス損失が全長にわたって1/10と
なっていることが確認された。細線加工技術の進歩とともに、サブミリ領域で充分に特性均質な線 材が確保されつつあることが示唆される。


11月8日(木)
B会場 9:45-12:30

加速器(2)/サイクロトロン(1) 2B-a01-05 座長 前田 秀明

2B-a01: LHCを用いた次の素粒子研究のために、衝突のルミノシテイを5倍に向上させるアップグレードが検討されている。関連して、中本(KEK)が、陽子ビームを
衝突軌道から周回軌道に戻すための双極磁石の概念設計を報告した。大口径化、漏れ磁場、耐放射線性などがポイント。アップグレードが成功し、新しい物理の
知見が得られる日が楽しみである。
2B-a02: KEKBの性能を40倍に高めたSuperKEKBの建設が進められている。これに関連して、有本(KEK)が、衝突点付近に設置する四極磁石の設計とプロト
機試験結果を報告した。コイル製造過程で生じた形状の歪により、想定より大きな6極エラー磁場が生じた。結果を実機に反映させるとのことである。
次の3報では、重粒子線がん治療装置に適用可能な高温超伝導サイクロトロンの報告があった。
2B-a03:石山(早大)は同システムを説明した後、①必要な磁場精度を得るためには高精度なコイル巻線が必要であること、②この目的のためにレーザー変位計を
用いた高精度な巻線計測法を開発したことを報告した。
2B-a04:高温超伝導サイクロトロンでは、等時性磁場(粒子エネルギーが増加しても周回時間が変らない)を保ちつつ、周方向に強弱をもつ収束磁場(AVF)を実現
する必要がある。植田(阪大)は、円形スプリットコイルとスパイラルセクターコイルを組み合わせて、上記の磁場分布の最適化設計を実施した。3次元形状の複雑なコイル
について精密磁場解析を実施しており大変興味深い結果である。
2B-a05:高温超伝導サイクロトロンでは、YBCO線材に誘導される遮蔽電流の作る磁場が精密磁場の障害になる。植田(阪大)は、通常線材、分割線材、スリット
線材の3種類のYBCO線材による遮蔽電流磁場の差異を解析で求め、分割やスリットにより遮蔽電流磁場の影響を大幅に低減できることを示した。


Y系コイル 2B-a06-10 座長 高橋 良和

東芝から「冷凍機停止後も動作可能な輻射シールドレスY 系伝導冷却マグネットの開発」について、その設計(2B-a06)及び試作と試験結果(2B-a07)の報告があった。
輻射シールドを無くしたマグネットシステムの可能性を示したもので、設計のオプションを提案したものである。解析に用いた物性値や試作されたマグネットの詳細について
質疑・議論があった。
フジクラから「20 cm 室温ボア5 T RE 系高温超電導マグネットの開発」(2B-a08)について、安定化銅の厚さの設計及びマグネットの通電試験結果が報告された。
東芝から「イットリウム系幅広線材を用いた積層コイルの開発」(2B-a09)及び「イットリウム系大型レーストラックコイルの開発」(2B-a10)について、通電試験結果の報告が
あった。前者はテープ幅の最適化を、後者は回転機等への適用を目指したものである。


11月8日(木)
C会場 9:30-12:30

安定性・保護 2C-a01-06 座長 淡路 智

近年、REBCOコイル開発が精力的に行われている状況で、重要視されている安定性と保護についてのセッションである。安定性に関する講演2件、クエンチ(異常)検出
3件、コイル作製方法1件の合計6件の講演が行われた。
戸坂ら(東芝)は、実際のコイル構造を想定し、含浸コイルと冷却板の間に熱抵抗がある場合の熱暴走特性について報告した。熱抵抗が介在する場合でも、そこに温度差
が発生するが基本的な熱暴走特性に大きな影響を与えないことを示した。
樋渡らと柿山ら(鹿児島大)は、かねてから提案しているポインチングベクトル法によるコイル内部の局所異常検出について報告した。樋渡らは、実際に局所異常が同方法で
十分に可能であることを実証し、柿山らは、温度上昇に伴う磁気的な変化による部分と、Tc以上で発生する電気抵抗による部分でシグナルに与える影響が逆となる事から、
エネルギーフローシグナルの時間変化にピークが現れることを示した。理論的なモデルを構築することで、異常の詳細に迫る可能性もあるとのことである。
福田ら(上智大)は、コイルを熱伝導の良いInによって含浸した結果、熱伝導特性が改善することで熱暴走電流が向上することを示した。さらに、In含浸コイルでは、巻き数
の多いコイルほど熱暴走電流が向上することを見出した。これは、熱伝導向上によりコイル自身の熱容量を有効に利用できることになったためと考えられる。
佐藤ら(千葉大)は、ポリイミッド電着被膜をREBCO線材に施した実機サイズ(内径30 mm、外径73 mm、190ターン)コイルを作製し、液体ヘリウム浸漬冷却で300 A(電流密度
529A /mm2)までの通電に成功したと報告した。線材全長に渡る電着では一部に気泡が発生したが、絶縁性能に劣化が無いことからそのまま巻線を行った。
また被膜は、巻線による巻き張力により圧縮され、当初20 μm厚であったものが巻線後には約10 μmまで減少したとのことである。
増井ら(早稲田大)は、4枚積層REBCOコイルにおいて、Hall素子を用いて偏流を測定することで、コイル内部の異常検出が可能であることを実証した。クエンチ検出が
ほとんど不可能とされるHTS線材において、バンドル導体の場合に限るが有効なクエンチ検出方法として期待ができる。これから、本格化するREBCOマグネットなどの応用
機器開発において、クエンチ検出・保護は、困難かつ重要な問題であり、まさに低温工学がカバーすべき重要な分野である。セッションでは、これらに関して活発な議論が
行われ、関心の高さを感じた。


HTS・MgB2バルク 2C-a07-11 座長 横山 和哉

2C-a07:瀬戸山(東大)らはRE123溶融凝固超伝導バルク体を製作する際に、RE元素を混合する手法を提案した。GdとDyの組み合わせを工夫することで、211粒子が
微細化し捕捉磁場特性が向上することを報告した。
2C-a08:富田(鉄道総研)らはφ40 mmのMgB2バルク体で13.5 Kにおいて3.5 Tの捕捉磁場を達成し、さらに同心円状の磁場分布が得られたことを報告した。
2C-a09:山本(東大)らはMgB2バルクを20 KでFC着磁し、3 T弱の捕捉磁場において3日後の磁束減少が2%以下であり、さらにFC後に 1 K冷却することで磁束クリープを
大きく抑制できるとのことを報告した。
2C-a10:佐々木(岩手大)らはHIP法でMgB2バルク体を製作することにより、比較的低い圧力下でも試料の高密度化に成功した。粒子間の結合が強くなり、捕捉磁場を
大きく向上することを報告した。
2C-a11:田村(岩手大)らはカプセル法、Mg-RLI法および比熱向上のためにWを添加したMgB2バルク体をパルス着磁した結果を報告した。バルク体直上で捕捉磁場分布
を測定した結果、後者では不均一な分布や磁場の低下が確認された。


11月8日(木)
D会場 9:45-12:30

水素利用(2)/超流動 2D-a01-05 座長 仲井 浩孝

2D-a01:塩津(京大)は、一様に発熱する垂直管内を液体水素が流れる場合の中心軸上の液温分布を測定し、流速の違いによる沸騰開始点の変化や管内の液体水素
の状態を明らかにした。ある流速を境に液温分布が異なることから、その原因を解明することが期待される。
2D-a02:村上(京大)は、液体水素の流速を測定するためにマンガニン線を用いた熱線式流速計を製作し、熱伝達特性や流速変化による冷却特性等を測定した。自然対流
による熱伝達を考慮する必要があることや熱線からの熱負荷が増大することなどが指摘された。また、気液二相流の場合にどう評価するかの検討が今後の課題である。
2D-a03:奈良(神戸大)は、液体水素のスロッシングをシミュレーション解析した結果を報告した。実験結果を良く再現しているようであるが、温度分布などの解析結果と実際
の現象との対応を確認する必要がある。
2D-a04:石井(筑波大)は、超流動ヘリウムを作動流体とするヒートパイプ全体にわたって加熱された場合の臨界熱量の報告を行った。内部にビーズを入れた場合についても
測定を行い、フィルムフローやヘリウムガスの流れとの関係についての議論が行われた。
2D-a05:村上(筑波大)は、超流動ヘリウムの熱カウンター流ジェットの流速をPIVで測定し、トレーサー粒子と常流動成分の流れの違いや、量子化渦との相互作用の考察を
行った。


小型冷凍機 2D-a06-10 座長 沼澤 健則

2D-a06:川田(金沢大)らは、室温磁気冷凍用に開発されたLa(FexSi1-x)13系化合物の熱膨張や磁歪特性について報告した。磁場中における磁歪やヒステリシスの発生について
議論がなされた。
2D-a07:中川(大阪大)らは、希土類窒化物磁性体の磁性蓄冷材応用について報告した。このなかで4 K領域に比熱のピークがあるErNの粒状化を試み、冷凍試験の結果を
示した。計算結果よりは下回るが、所定の効果があることを示した。
2D-a08:門間(千葉大)らは、室温磁気冷凍のAMRを多層化した場合の冷凍性能の解析を行った。Gdの磁気転移温度を変化させた仮想物質を用い、2層化した際の吸熱量
と作動温度特性、冷凍効率などの解析結果を示した。
2D-a09:牧野(東工大)らは、車載用エアコンを目指した磁気冷凍システムの考察と基礎的な実験結果を報告した。磁性体間を機械的接触による伝熱を用い、カスケードで温度
差を発生させる方式を考案した。性能は十分ではないが、今後の展開に期待する。
2D-a10:楢崎(住友重機械)らは、宇宙用冷凍機として使用される2段JT方式のJT冷凍機に関する考察を報告した。従来使用されてきた1段JT冷凍機に対し、2段JTの採用に
よって更なる性能の向上が見込まれることが示された。


11月8日(木)
P会場 ポスターセッションII 14:30-15:45

MgB2(2) 2P-p01-04 座長 山本 明保

2P-p01 藤井(NIMS):充填粉の精製によるex-situ 法MgB2 線材のJc 特性の改善について報告があった。高磁界特性に有効な炭素置換量の増大、及び粒間結合の改善による
更なる特性向上を意図して、MgB2 : Mg : C = 100 : p : qのモル比混合粉末に対し、種々の有機媒体中、ボールミルによる湿式粉砕処理を行った。Mg添加量を変化させた試料
においては、p =10において最も高いJcが得られた。鉱油中粉砕処理を行い、C添加量を変化させた試料においては、q =0, 1.5の試料において4-6%の高い実効C置換量が
得られたが、q >5の試料では過剰添加に伴う粒間結合の劣化が認められた。
2P-p02 葉(NIMS):Mg 粉末添加内部Mg 拡散法MgB2線材におけるMgB2の層厚と臨界電流特性について報告があった。ホウ素層に添加するMg量を系統的に変化させて内部
Mg 拡散法線材を作製し、熱処理反応後のMgB2層厚とJcJeを評価した。Mg添加量の増加に伴いMgB2層厚は増加した。さらにMg添加により未反応ホウ素の量が減り、
JcはMgを6mol%添加した試料で最高となった。MgB2層厚とJcのバランスからJeはMgを15mol%添加した試料で最も高くなり、4.2 K, 10 TにおいてJe = 6,000 A/cm2を記録した。
2P-p03 兼田(日大):Cold High Pressure Densification (CHPD)プロセスによるMgB2線材の作製について報告があった。in-situ PIT法で作製したMgB2線材の線材コアの高密度化を
図るためにCHPD法を導入し、原料マグネシウム粉末の平均粒径を変化させた際のJcへの影響について評価した。CHPD高圧印加を行わなかった試料においては、Mg粒径が
小さいほど高いJc特性を示した。CHPD後にはいずれの試料でも大きなJcの改善が得られたが、CHPD後の試料はいずれもほぼ同等のJcを示した。
2P-p04 川本(富山大):高体積率MgB2/Al-1.0mass%Mg2Si 複合材料の時効挙動と超伝導特性について報告があった。三次元溶湯浸透法により複合材料ビレット(MgB2 50 vol%)
を作製後、押出加工を施した10 mmφ試料について、時効挙動、微細組織、超伝導特性の評価を行った。MgB2が微細に分散した組織がみられ、MgB2が含まれない試料と比較
して複合強化による硬さの増加が認められた。超伝導転移温度はMg2Si 無しの試料と同等の38 Kが得られた。


HTSバルク・薄膜 2P-p05-11 座長 内藤 智之

2P-p05 村上(一関高専):Dy-Ba-Cu-Oバルクを放電プラズマ焼結した前駆体を用いて作製した。その結果、従来の圧粉体から作製したバルクに比べて気孔が少ない傾向が見られる
ことを報告した。
2P-p06 谷(芝浦工大):Y-Ba-Cu-Oバルクの耐食性が樹脂含浸処理によって向上し、捕捉磁場値に対する温度履歴や磁場印加による応力の影響が非常に小さくなることを示した。
2P-p07 川人(芝浦工大):BaSnO3(BSO)の添加によってY-Ba-Cu-Oバルクの捕捉磁場値が増大することを示し、その原因がBSO添加によってYBaCuO5(Y211)が微細化したこと
に加えてより微細なY2Ba4CuSnOxが生成して磁束ピン中心として働いたことにあるとした。
2P-p08 大谷(芝浦工大):処理条件の異なる形状記憶合金リングで補強したGd-Ba-Cu-Oバルクの捕捉磁場を測定した結果、容体化処理を施すことでリングの形状回復率が向上
し捕捉磁場値も増大することを明らかにした。リングの圧縮予荷重によるひずみの緩和が臨界電流の低下を抑制したためとした。
2P-p09 鈴木(芝浦工大):箱形電気炉内にバルク作製用の容器を設置し、その中にアルゴンガスを導入することにより低酸素分圧を実現(簡易OCMG法)して(Nd, Eu, Gd)-Ba-Cu-O
バルクを作製した。現時点で作製したバルクの超伝導転移温度は90 K に届いていない。
2P-p10 岡島(東京大):直径140 mmのGd-Ba-Cu-Oバルクの液体窒素温度における捕捉磁場をバルク両面で測定した後、逆問題を解くことでバルク内の電流密度分布を推定した。
さらに得られた電流密度を用いたFEM解析からバルク内部の磁場分布を求めた。その結果、バルク内の電流密度は108 A/m2 程度であること及び電流密度の磁場依存性にピーク
効果を見出した。
2P-p11 多田(名古屋大):YbBa2Cu4O8薄膜を固体エピタキシャル成長法で作製した。SrTiO3 基板を用いて20 h 以上の酸素アニールした結果、c軸配向膜の作製に成功した。また、
化学量論組成に近づけるとTcが向上した。


MgB2バルク 2P-p12-13 座長 馬渡 康徳

2P-p12:石原ら(鉄道総研、東大)は、MgB2バルク試料の熱処理条件の最適化について報告した。Ar雰囲気中650-950℃で3時間の熱処理を行ったバルク試料を6 Tの磁場中
冷却で着磁した結果、650℃より高い熱処理温度の場合はほぼ同程度の捕捉磁場を得た。特に熱処理温度850℃の場合に15 Kで1.82 Tの捕捉磁場が得られ、試料内の磁気
特性もほぼ均一であり、MgB2バルク体は数テスラ級の強力なバルク磁石として有望であることを報告した。
2P-p13:小山ら(岩手大)は、パルス着磁したMgB2バルク試料における捕捉磁場や温度変化の有限要素法シミュレーションについて報告した。バルク試料のE-J特性としてn
モデル等を用い、電磁界と熱伝導の連成方程式を解いたシミュレーションの結果は、捕捉磁場の実験結果と定性的に一致することを確認した。より精密な解析を目指して、
熱容量や熱伝導率の温度依存性を考慮した数値計算の進捗についても報告した。


A15その他 2P-p14-16 座長 小黒 英俊

2P-p14 冨田ら(大同大)は、Nb3Sn線材に関してNb3Snフィラメントのツイストが、線材の機械特性に与える影響を報告した。発表では、有限要素法を用いた解析によって、
ツイストがある場合と無い場合にNb3Sn線材のヤング率を計算し、大きな変化が無いことを示した。
2P-p15 金ら(KEK)は、引張りひずみを与えたNb3Al線材に対して、中性子回折を用いて内部ひずみを測定した結果を報告した。外部から与えるひずみに対して、内部の
Nb3Alに加わるひずみが8割程度に軽減されている結果が示された。
2P-p16 村上(富山大)らは、TiGa3化合物を用いて作製したV3Ga線材のA15相の形成に関して報告した。微細構造を調べたところ、A15相の生成量に結晶方位異方性がある
ことがわかった。


送電ケーブル(2) 2P-p17-22 座長 八木 正史

2P-p17:丸山(ISTEC-SRL)は275 kVの超電導ケーブルの構造で伝熱と・流体特性の数値計算があり、32 L/minの流量値で冷却距離は6 kmになるとの報告があった。
2P-p18:王(早大)からは66 kV-5 kAの1 km超電導ケーブルでIcの低下部位が100 mm長ある場合、熱暴走に至る可能性を報告していた。
2P-p19:Vyatkin(九工大)からは外部磁場を与えた時の多層超電導のIcを数値解析しており、典型的なケースとして7層導体の結果について報告があった。
2P-p20:赤坂(鉄道総研)からは10 kA-1500 Vのケーブル結果が、さらに、2P-p21:小林(鉄道総研)からは太陽光発電システムに200 A-300 Vの超電導ケーブルを接続して
試験した結果についての報告があった。
2P-p22:松下(東大)からは、直流き電線に超電導ケーブルを併設した場合の経済性効果が検討され、上下線を考慮にいれても、省エネさらには変電所の削減などの効果が
あるとの報告があり、この分野での超電導適用も期待される。

HTSコイル技術 2P-p23-32 座長 宮﨑 寛史

2P-p23:蔵脇(九大) Bi2223線材を使用したダブルパンケーキコイルを16個積層したコイルの交流損失・評価について報告があった。短尺試料の交流損失(履歴損失)から
得られたコイル交流損失の計算値と実験値を比較し定量的に一致することを示した。
2P-p24:坂川(九大) 導体を転位した構成のコイルにおいて、導体端部で電気的に接続された箇所で発生する付加的交流損失について報告があった。転位位置のずれが
与える影響について検討した。
2P-p25:澤田(九大) 転位並列導体を用いたダブルパンケーキコイルにおいて、素線数を変えた場合の電流分流について報告があった。素線数によらず電流を均一にできる
ということであった。
2P-p26:福田(九大) Y系超伝導変圧器の交流損失の定量的な予測方法について報告があった。超伝導変圧器の交流損失を実測し、線材の交流損失から見積もった計算
結果と比較し、定量的に一致したということであった。今回は、線材の中心部にかかる磁場を代表して計算したが、今後は、幅方向の磁場分布の影響を考慮した計算を実施する
ということである。
2P-p27:高木(ISTEC) Y系レーストラック型コイルの交流損失の測定結果について報告があった。交流損失はヒステリシス損が支配的であり、温度条件によっては、渦電流
の影響も見られたということであった。
2P-p28:小方(鉄道総研) 5 T発生可能なY系高温磁石の要素試験について報告があった。剥離強度が通常のエポキシと比べて低いシアノアクリレート樹脂を用いることに
より劣化のないコイルを製作できると いうことであり、今回、ダブルパンケーキコイルを10枚積層したコイルを製作し、45 Kで5.2 Tを達成した 。
2P-p29:増井(早稲田大) Y系コイルを模擬した銅モデルコイルを用いてパラフィン含浸とドライの伝熱特性を実験的に評価した内容について報告があった。パラフィンでも接触
面積が90-100%ぐらいとなり、ドライに比べてよいということであった。
2P-p30:松本(物材機構) パラフィン含浸のコイルで伝導冷却試験を実施した内容について報告があった。今回は対称のコイルが小さいものの、伝導冷却下で無事に通電試験
が実施できたということである。
2P-p31:Dong Lak KIM(KBSI) 絶縁なしのY系DPコイルを16個積層して、5 T級のマグネットを開発した内容について報告があった。積層コイルの上下端のコイルを2枚バンドル
構成のコイルとすることでコイルIcを向上させることに成功したということであった。また、絶縁なしのコイルでも特に問題ないということであった。
2P-p32:古瀬(産総研) Y系コイルを用いたベクトルマグネットに関して報告があった。ユニットコイルの電流値を調整して任意の角度に磁場を発生できるマグネットであるが、Y系
コイル特有の遮蔽磁場の影響により磁場角度の調整が難しいということであった。ただし、一度磁場を定格以上にあげてから下げて使用することで調整は可能ということである。


加速器(3)/サイクロトロン(2) 2P-p33-40 座長 中本 建志

2P-p33, p34において、京大グループ(柴田、紀井)は、放射光ビームラインの高性能化を目指したバルク超伝導体を用いた短周期アンジュレータの開発に関する報告
(磁場測定、全体開発)を行った。放射光の短波長化、輝度の向上のためには、アンジュレータ磁極の短周期化と強磁場化が必要とされるが、上下層で位相を半周期
ずらしながらスタックしたバルクHTSに外部ソレノイドにより遮蔽電流を誘起させることで、ビーム軌道に強い周期交代磁場を発生する。今回は0.85Tまでのアンジュレータ
磁場生成に成功した報告があった。
2P-p35~p40は主に早稲田大・放医研グループ(石山、道辻、道辻、宮原、王、狩野)によって実施されている、HTSテープ線材を用いた重粒子線がん治療のための次世代
超電導サイクロトロンの開発に関する一連の研究報告(開発のまとめと課題、中性子照射による超伝導特性の影響、同機械特性の影響、同放射化評価、コイルの磁場
精度解析、巻線精度評価)が行われた。加速器応用に求められる10-4以下の磁場精度に必要なコイル巻き線の高精度化と磁場評価に関して報告があった。さらに、加速器に
不可避である放射線(今回は中性子)がHTS特性に与える影響を綿密に調査していた。


11月9日(金)
A会場 9:00-12:15

磁気分離 3A-a01-04 座長 川越 明史

3A-a01は、阪大のグループからの発表で、土壌からの放射性物質除去についての報告であった。酸洗浄と磁気分離法を組み合わせることによって,粘土質土壌に吸着している
放射性セシウムの約60%を除去でき、貯蔵施設等における保管土砂の減容と保管期間をおよそ半減できることが示された。
3A-a02は、阪大のグループからの発表で,磁気アルキメデス分離装置についての報告であった。媒質として,パーフルオロカーボンに酸素を加圧溶解させたものを用いれば、
食品や医薬品、生体への影響を抑えた分離装置が可能になるとのことで,その実現性について検討した結果について示された。今回は、一定酸素圧力下で異なる磁場を印加
することにより,媒質に浮べた3種類のプラスチックの分離に成功した結果が報告された。
3A-a03は、足利工大と新潟大のグループの発表で、高勾配法磁気分離法における、分離物質回収の簡易化に取り組んだ結果についての報告であった。新たに平面フィルタが
提案され、その効果が実験的に示された。従来型のフィルタよりも回収率は劣るものの、磁気分離に成功した結果が示された。
3A-a04は,九大とネッツ産総研,阪大のグループの発表で,医薬用たんぱく質の高速分離・精製・回収用超電導マグネットの製作結果と励磁試験結果についての報告であった。
マグネットはNbTiで巻線した伝導冷却型のものであるが、今回は、浸漬冷却で励磁試験を行った結果であった。設計通りの磁場までの通電に成功した結果と,消磁のためのLC
共振回路が設計通り通電できたことが報告された。消磁のために,印加磁界を振動させながら減衰させていることについて、磁気ビーズが回転して消磁できないのではないかと
いった指摘がなされ、活発な議論が行われた。フィルタを消磁すると考えるべきとのコメントがあった。


医療応用 3A-a05-06 座長 岡 徹雄

中川公太ら(阪大、3A-a05)は、超伝導バルク磁石の3 Tの強磁場を用い、マグネタイトで担磁したDNAに対する生体内部での拡散の防止効果を狙った。体表面を模擬
した磁極表面から患部までの距離を20-50 mmとし、拡散への磁場の効果を計算結果として報告した。血管からドラッグデリバリシステムによって供給される薬剤の、
癌などの生体患部組織内での移動制御に大いに役立つと考えられる。
山本俊二ら(三菱電機、3A-a06)は、すでに1300台以上のMRI用マグネットを実用的に製造出荷してきた中で、MRI用超伝導磁石の安定性に関して、24年もの長期間に
わたり継続して連続運転を行ってきた結果を示した。当初の設計に対して2桁安定性のよい結果が得られたことを報告した。


回転機 3A-p07-12 座長 福井 聡

3A-a07 京大のグループで開発が進められている高温超伝導誘導/同期電動機の固定子に,ビスマス線材を適用した場合の固定子巻線に発生する交流損失の評価結果を
報告している。ビスマス線材を用いた固定子巻線に3相交流を通電した時の交流損失をパワーメータで測定したところ,測定値は各コイル単独の損失の総和に等しいことが
示された。本報告では,回転子のない状態で行われているが,高温超伝導電機子巻線の交流損失評価はほとんど行われていないので,今後の研究の進展を期待したい。
3A-a08 液体水素ポンプ用として開発が進められているMgB2を利用した全超電導モータの固定子巻線構造の検討及び同期回転試験の結果が報告された。今後,ACロスの
評価等を行っていくとのことであった。
3A-a09 高温超伝導誘導/同期電動機の速度制御法の検討結果が報告された。最大トルク追従制御と最大効率追従制御を行った場合の特性比較を行ったところ,最大
効率追従制御の方が広いトルク範囲で高効率が維持できることが示された。その反面,励磁電流が大きくなる。
3A-a10 埋め込み永久磁石型同期電動機では,回転子内の磁石の埋め込み位置や形状を工夫することにより,リラクタンストルクを有効利用できるようになっている。本研究で
は,高温超伝導誘導/同期電動機の回転子に高温超伝導バルクを挿入して,リラクタンストルクを利用する方法が報告された。高トルクが必要な状況のみ,鉄心を飽和させて
高温超伝導バルクの反磁性によりq軸方向のリラクタンス(磁気抵抗)を変化させるコンセプトが説明された。
3A-a11 冷却系の不具合や始動直後のような状況を想定した,高温超伝導誘導/同期電動機の臨界温度近傍及びそれ以上の温度領域での特性評価が報告された。臨界
温度近傍の運転でも高効率が維持できることが示された。
3A-a12 大容量風力用の突極型高温超伝導同期発電機の設計検討が報告された。短軸長・大直径の方が,重量・必要線材長・効率等の性能が向上することが示された。
コイルサポートや冷却ベッセルの構造の検討も行われた。


11月9日(金)
B会場 9:00-11:45

ピンニング特性 3B-a01-06 座長 山田 穣

本セッションでは、以下の6件のピンニングに関する発表がなされた。
3B-a01:小傾角粒界の磁束ピンニング特性評価 堀出 朋哉(九工大)ほか
3B-a02:IBAD 基板上に作製したダブルドーピング人工ピン導入 YBa2Cu3O7-x 薄膜の超伝導特性 松本 要(九工大)ほか
3B-a03:広範囲に方向分散した柱状欠陥を導入したYBCO薄膜の磁束ピンニング特性 末吉 哲郎(熊本大)ほか
3B-a04:Ba-Nb-O添加RE123薄膜における成膜温度に依存したナノロッド形態の変化と局所的臨界電流密度分布の関係 春田 正和(高知工科大)ほか
3B-a05:高品質 Bi2212 エピタキシャル薄膜のJc の磁界・温度依存性 山崎 裕文 (産総研)ほか
3B-a06:超伝導ナノストリップにおける散逸状態に関する時間依存Ginzburg-Landauシミュレーション 馬渡 康徳(産総研)ほか
特に、以前から続いているYBCO薄膜中におけるBa系酸化物人工ピンの挙動がより詳しく調べられている。堀出、松本らはダブルドーピングや粒界の影響を論じている。本系は、
従来のNbTi、Nb3Sn線と違い、ある程度成膜条件で組織をコントロールできるのでピンニングの研究に適していると改めて思った。実用的にも、また、コスト的にもさらに高いJc
望まれるので、一層期待される。


NMR(2) 3B-a07-10 座長 三戸 利行

「3B-a07:前田(理研)」では、JSTのS-イノベの研究開発テーマとして進められている「高温超伝導材料を利用した次世代NMR技術の開発」について、最初に研究全体の
進展状況の報告があった。約1.7 km長のREBCO線材をレイヤー巻線し、ワックスで含浸した内層コイルの単体励磁試験を行って、特性劣化が生じないことを確認している。
次に「3B-a08:柳澤(千葉大)」では、前述のコイルを内層コイルとした500 MHz(11.74 T)REBCO/LTS NMR磁石の時間安定度及び空間均一度の評価について報告
している。REBCO線材特有の遮蔽電流の影響で時間安定度及び空間均一度に大きな影響があることが明らかとなった。
続いて「3B-a09:柳澤(千葉大)」では、LTS外層コイルとREBCO内層コイルの保護抵抗値を最適化することにより、LTSコイルからの電流乗り移りによるREBCOコイルの
損傷を防ぐことが可能であることが報告された。
最後に「3B-a10:大嶋(山形大)」では、400-700 MHz NMRの高温超伝導検出プローブ開発の基礎的検討について報告があった。温度20 Kで運転可能な高温超伝導
プローブのQ値の向上を目的として、高磁場下での薄膜の表面抵抗測定結果と検出プローブ形状の最適化の検討結果が示された。


11月9日(金)
C会場 9:00-12:00

LHD & JT-60SA 3C-a01-06 座長 石山 敦士

3C-a01:柳 長門(NIFS)、3C-a02:寺﨑義朗(総研大)、3C-a03:伊藤 悟(東北大)らは、ヘリカル型核融合原型炉FFHR-d1(蓄積エネルギー:160 GJ, 大半径:15.6 m,
経験磁場:13 T, 電流:100 kA級)用導体候補としてHTS導体(間接冷却)の使用を検討している。今回は、30 kA級高温超伝導導体の製作と通電試験について上記3件の
報告があった。GdBCO線材を20枚(2列×10層)積層し銅ジャケットに収め、さらにその外側にステンレスジャケットをボルト締めした導体を製作し通電試験を行った結果
について報告がなされた。
まず、「3C-a01」ではFFHR-d1およびHTS候補導体と通電試験の概要について説明がなされた。最終の導体形状として丸型導体を想定し、経験磁場方向に応じて回転
できるようにする案(線材テープ面に対して経験磁場が常に平行になるように導体を回転)が示された。
「3C-a02」では試作導体の通電試験の結果について報告があった。導体の温度を20 Kに保った状態でバイアスコイルの中心磁場を8 Tから6.1 Tに変化させたとき、
約40 kAの電流を安定に流すことができた。FFHR-d1のマグネット設計のオプションの一つとして、マグネットもしくは導体を分割製造し、これらを接続して使用する方式
が提案されている。今回通電試験に供されたサンプル導体には、同グループにより検討を進めてきた機械的ブリッジジョイントが施されている。
「3C-a03」では、接続部の設計・製作および通電試験の結果として接続抵抗の評価を行った結果が報告された。
3C-a04:吉田(原子力機構)、3C-a05:大西(原子力機構)、3C-a06:村上(原子力機構)では、JT-60SA超伝導マグネットに関する報告がなされた。
まず「3C-a04」では、JT-60SA計画のプラズマ点火は当初の2016年3月から3年延期し2019年3月で計画を進めていること、各機器の設計や試験は完了し製作も順調に
進んでいることの報告があった。2013年初頭にクライオスタット基礎部の据付を行い、JT-60SA本体の組立が開始される。
「3C-a05」においては、当初設計されたJT-60SAヘリウム分配システムでは、既存設備の再利用にともなう空間的制約などの問題点があることがわかり、一部設計変更
を行ったことの報告があった。現設計ではこれらの問題点は解決され、現在製作性の検討を進めている。
「3C-a06」において、JT-60SA計測システムは、マグネット保護に用いるクエンチ検出装置は二重化し信頼性をあげること、システムの運転管理に使用するセンサ類は
不具合抑制のため最小限の配置とすることの報告があった。また、核融合装置特有の耐電圧、耐放射線性を持つシステムの開発を行っており、これまでに計測ケーブル
の選定を完了したとのことである。


ITER 3C-a07-11 座長 柳 長門

ITER のマグネットと導体関連について、5件の発表があった。
3C-a07 松井(代理発表 辺見、JAEA): TF コイルと構造物について第1号機の調達を行う「第2段階」の活動が開始され、製造メーカとの契約が締結された。また、今後の製作
に関する基本工程が示され た。最終的に3ヶ月にひとつずつ完成していくという極めてタイトなものとなるが、十分な詳細検討のもとに策定されている。
3C-a08 布谷(代理発表 高橋、JAEA): スイスの SULTAN 装置を用いた導体試験において、CS 導体サンプルで測定された分流開始温度が繰り返し通電によって低下していく
問題が懸案となっていたが、撚線ピッチを短くすることで劣化が観測されなくなっ た。これは素線が動きにくくなったことが原因であると考えられるが、詳しいことは検討中である。
併せて、CS モデルコイルを再稼働して最新の CS 導体で製作したインサートコイルの試験を行う予定があり、2014年初頭をめざして準備が進められている。
3C-a09 高橋(JAEA): TF 導体のジャケットに撚線を引き込む工程において、撚線ピッチが長くなること、および、撚線が全体に回転することが定量的に確かめられ、モデルに
よる解析と 良く一致している。これは同様の製造方法によるケーブルインコンジット導体に共通する現象であるが、超伝導特性に大きな影響を及ぼすことはな いレベルである。
ただし、交流損失等の詳細な議論においては、このような振る舞いを考慮することが今後求められる。
3C-a10 尾関(JAEA): CS 導体の JK2LB ジャケットについて、フェーズドアレイ方式の超音波探傷計を用いることで初期欠陥を有効に検出することが可能であることが示され、
すべてのジャケットの検 査に適用されている。
3C-a11 辺見(JAEA): CS 導体サンプルの繰り返し通電による劣化(3C-a08 参照)が生じる原因として、これまでは電磁力で押される側において素線同士の接触点を支点と
して曲げ歪みが生じると考えられてきた。しかしながら、試験後のサンプルの分解調査の結果、撚線の隙間が空く側において大きなたわみが発生していることが認められた。
サンプルをJ-PARC の中性子回折装置「匠」に入れて調べた結果、たしかに隙間が空く側で大きな曲げ歪みが定量的に観測された。これは画期的な成果であるとともに、今後
のさらなる発展が期待される。


11月9日(金)
D会場 9:00-12:00

疲労 3D-a01 座長 熊谷 進

3D-a01:由利(NIMS) Ti-6Al-4V合金の20 Kガスヘリウムにおける応力比0.01の疲労試験を行い、極低温高サイクル疲労特性に及ぼす組織の影響を検討した。Ti-6Al-4V
合金の(α+βanneal)材、β炉冷材、β空冷材、β水冷材の107回疲労強度は、β水冷材>β空冷材>β炉冷材>(α+βanneal)材の順で高い値を示した。これは、冷却速度の増大
に伴いβ相の針状組織が細かくなり、疲労破壊開始点が小さくなるためであることを組織観察および走査電子顕微鏡による破面観察から明らかにしており、今後破壊靱性
などのデータも蓄積されていくことで、極低温構造材料の選定指針になるものと考えられる。


SQUID応用 3D-a03-06 座長 中島 健介

「SQUID応用」セッションでは、HTS-SQUID応用に関して太陽電池セルの電圧電流特性の画像化1件、地下資源を目指したオンサイト地磁気SQUID―NMR装置の試作1件と
その環境磁場ノイズの低減に向けた磁気シールドの開発1件の他にHTSマイクロ波フィルタの携帯基地局送信フィルタ応用に向けた高耐電力化1件の計4件の発表があった。
低磁場SQUID―NMRに関する2件の報告では、使用する常温磁束ピックアップトランスの効果が理論予測の20%程度にとどまっている点について漏洩磁束の低減などにより
今後さらなる感度向上の余地があるとの指摘があった。また,オンサイト計測に向けてアクティブ磁気シールドだけでは不十分な環境ノイズの低減させるビスマス系HTS磁場
シールドに関して、シールド体における磁束ピンニングがシールドの効果を大きく左右するという興味深い結果が報告された。


冷却システム(2) 3D-a07-11 座長 上岡 泰晴

3D-a07:武田(東大) 既に開発済みのSQUID脳磁計用ヘリウム循環装置のクライオスタット接続管は、太いためクライオスタット側の改造が必要であった。今回は、これを細くし、
一般の脳磁計やMPMS(低温物性測定装置)にも使用できるようにした。
3D-a08:池田(筑波大) 南極昭和基地に於いて、超電導重力計観測を22,132時間の長期間連続を行った。この間、4 K G-M冷凍機のメンテナンスも行わなかったが、冷凍機の
性能劣化は殆ど見られなかった。
3D-a09:東谷(東大) 大型低温重力波望遠鏡のサファイア結晶製鏡を20 Kまで冷却する為の、パルス管冷凍機を使用した低振動冷凍機ユニットの開発を行っている。共振
周波数分布を調べながら、冷凍機ステージ部の剛性向上の改良を行い、現在仕様を満たすレベルに達している。
3D-a10:百瀬(阪大) 高圧ガス保安法に関しては、地方分権の思想から、都道府県から市町村への移行が進んでいる。大阪大学では、敷地が2つの市に跨っているため、
事業所が2つになり兼ねないことや、権限委譲が済んでいない市と済んでいる市に跨った事などが問題となったが、解決されていない。
3D-a11:宮崎(鉄道総研) 冷凍部会では、14年間にわたって7 T超電導マグネットを製作する低温技術講習会(低温技術夏合宿)を開催してきた。本年度からは、「77 K小型
冷凍機を作ろう」と言う講習会となった。実際にパルス管冷凍機を製作し、各種モードで運転し、目標の77 Kを大きく越えた最低温度69 Kを達成した。